2019.07.05

科学的地域環境人材(サイレッツ)育成事業における新規ビデオ講義の紹介(1)

 三重大学の「科学的地域環境人材(Scientific, Local and environmental “talented staff”:SciLets = サイレッツ)育成事業」では,現在33科目のビデオ講義を開講しています。

 

 

 

 これらの講義は基本的には環境問題に対応する講義ですが,サイレッツ育成事業では環境問題を「第1分野:環境問題・環境評価法」,「第2分野:エネルギー技術」,「第3分野:環境配慮技術」,「第4分野:環境管理・ESDSDGs」,「第5分野:環境関連法・行政」,「第6分野:大気・水と食の健康リスク」,「第7分野:自然環境保護・生物多様性」,「第8分野:気候変動問題」,「第9分野:コミュニティ&インバウンド」および「第10分野:環境経済・経営,ESGと広くカバーしていますので,広範囲なSDGsともよく整合しており,不足する部分は第4分野で解説を加えます。既存の各ビデオ講義とSDGsの関係は,三重大学国際環境教育研究センターのホームページ:

 http://www.gecer.mie-u.ac.jp/sdgs.html で解説しています。

 本年度に入り,サイレッツ人材育成事業に新たにビデオ講義が開設されましたので,ご紹介します。これらのビデオ講義は,サイレッツ人材育成事業に登録した受講生(社会人・学生)の環境教育に用いられます。

 

【第4分野】『環境マネジメントシステムを活用したSDGsの取り組み

(講師 奥山 哲也〔三重大学非常勤講師〕)』

 本科目は、国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の国際目標である「持続可能な開発目標:SDGs」に組織として取り組むための方法について、マネジメントシステムの構築・運用の手法を例として解説します。講義構成は、SDGsの17の目標について、特に環境に関連する目標を、3(健康・福祉)、5(ジェンダー平等)、7(エネルギー)、9(産業・技術革新)、11(まちづくり)、12(持続可能な生産と消費)、13(気候変動)、14(海洋)、15(陸域生態系・生物多様性)に絞り,169のターゲットを整理して説明。SDGsの目標の達成方法として環境マネジメントシステム規格を元にPDCAサイクルを活用する方法を解説します。

 

【第4分野】『SDGsの概要と今後の展望

(講師 黒澤 亮輔〔サスティービー・コミュニケーションズ

株式会社シニアコンサルタント〕)』

 2015年9月に国連サミットにて採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2030年を期限し、貧困、健康と福祉、雇用、気候変動など持続可能な社会実現のために達成するべき17の目標と、169のターゲットで構成される国際目標です。現在SDGs達成に向けて、世界のあらゆるセクターがさらなる取り組みを進めています。本講義では、SDGsの採択の経緯や意義、国、企業、自治体などの実施主体に求められる役割や期待、SDGsの現状の進捗や課題、今後の展望など、事例を交えながら講義します。

 

【第2分野】『電池(1次電池と2次電池)の進展と省エネルギー    

(講師 今西 誠之〔三重大学大学院工学研究科教授〕・   

坂内正明〔三重大学国際環境教育研究センター客員教授〕)』

 電気を貯蔵する蓄電池や省エネルギーは、地球温暖化の抑制に有効で近年著しい技術の進展が見られます。前半部で、電気の利用効率に優れた蓄電池の作動原理と機能を概観します。電池の社会的役割は、電気使用の空間的・時間的自由度を高めることですが、ここではリチウムイオン電池を中心に、材料(正極・負極)の観点から現状と課題、最後に固体電解質を使用した全固体電池を解説します。

 さらに後半部では、省エネルギーへの取り組みを紹介します。省エネの着眼点としては、運用改善と長期に利用してきた機器のライフサイクルの視点での更新の見極めが重要です。このような視点から、中小企業を想定し工場や業務部門での省エネ検討事例や成果を紹介します。

 

【第2分野】『空調と電力の制御技術進展

(講師 廣田 真史〔三重大学大学院工学研究科教授〕・  

山村 直紀〔三重大学大学院工学研究科准教授〕)』    

 事務所などの業務用ビルでは、空調のエネルギーがビル全体の半分近くを占めているので、省エネの推進には、空調エネルギーの削減が重要です。前半では、ビル空調で広く使われている冷凍サイクルの原理と冷媒にかかわる環境問題について説明し、建物で実際に稼動している空調機の運転状況と性能、そして省エネ化の事例を紹介します。

 また近年、地球温暖化抑制に向けて再生可能エネルギーの固定価格買取制度が導入され太陽光発電が広く普及しました。しかし地域によっては電力系統が不安定となり停電リスクが発生し、電力の安定性確保が社会的に大きな課題になってきました。ここではこの課題を解決する一つの手法としてスマートグリッドを取り上げ、その要素となる技術を解説します。

 

 以上のように、現在作成開設しつつある講義は、主にSDGsの普及啓発と,産業がSDGsと大きく関連する「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、「つくる責任つかう責任」さらには「気候変動に具体的な対策を」などと関連しています。