特集

『国連アカデミック・インパクト(UNAI)特集』は、UNAIの取り組みが正式に始動した2010年秋に刊行されたUN Chronicle第XLVII巻3号に収録され、UNAIの取り組みの進捗状況、成功例、今後の課題などについて多角的に紹介するものです。

たとえば、「全ての人に教育を」の著者イリナ・ボコヴァUNESCO事務局長はモンゴルの大平原の移動式テント学校について語ります。世界各地の子どものそれぞれの特殊事情に合わせたアプローチを取ることで、この10年間で非就学児童数が南アジアと西アジアで半分以下に減り、サハラ以南のアフリカでも28%減少しました。しかし、まだまだ取り残された子ども ― とりわけ女児 ― が多いことをボコヴァ氏は嘆き、世界全体の危機回避という観点からも、教育にもっと力を入れる必要があることを説きます。

NGO代表アレクサンドラ・ヴュイッチ氏は「教育はモバイル化できるのか?」(と題し、インドで展開されているモバイル・スクールを新しい教育のモデル・ケースとして詳細に報告します。恵まれない子どもたちに教育の機会を広げる「シンプルながら画期的かつ効果的な手段」として評価し、他地域への導入も勧めます。

環境問題に詳しいベン・ウィズナー氏(南カリフォルニア大学教授)は「持続可能性を推進する手段としての教育」の中で、気候変動への対応と教育の関係について論じます。気候変動の影響を最も受けやすいのはアフリカなどの貧しい地域であり、そこにいる人たちが今後の状況変化に自発的に適応できるような支援が必須であること ― つまり、教育が必要であること ― を力説します。

このほか、マレーシアの多言語社会と教育の関係、カンボジアの人々の生活向上に役立つ成人教育の成功例、黒海地域の諸大学を結ぶ大プロジェクトなど、世界各地の知られざる教育事情がわかりやすく説明されています。また、教育問題に取り組む専門家たちの問題分析も丁寧に紹介されています。世界の広さと複雑さ、生活改善のために必死に勉強する人々の姿、そういう人々を支援する専門家たちの努力を身近に感じながら読むことのできる一冊です。

潘基文(パン・ギムン)国連事務総長はメッセージの中で次のように語っています。「全ての人々のためのより平和で豊かな、かつ公正な世界を築くための私たちの取り組みに、この学術パートナーシップが大きく寄与することを期待しています」

 

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