教育を通じて不寛容を捨てる

「私たちは、愛、寛容、他者を認める姿勢という価値観を共有する社会を築く必要がある。」

サレー・ハシェム・モスタファ・アブデル=ラゼク
SALEH HASHEM MOSTAFA ABDEL-RAZEK
アラブ大学協会事務局長

「文明間の対話」を求める動きは、21世紀の重要な特徴の一つになっている。この用語自体は、東西間の冷戦終結後にサミュエル・P・ハンチントンが提起し、一部の欧米の教育者に取り入れられた「文明の衝突」という概念に代わるものとして、その概念を再考するために用いられてきた。

イスラム世界でも欧米でも、多くの国際機関が文明間の対話を求める声から生まれた取り組みを支援してきた。こうした取り組みは、深く幅広い知識と固定観念の検証を通じて隔たりをなくし、「他者」を脅威や敵とみなすメディアや一部の政治組織や市民団体によってしばしば助長される否定的なイメージや偏見を打ち消すことの重要性に焦点を当てている。力を入れる必要があったのは、メディアの啓発、学校教育課程の立案のほか、情報技術や現代的な通信手段を利用して他者の習慣、思想、行動、慣行に対してより現実的で中立的な見方ができるようにすることである。

イスラムは宗教としても文明としても、単一の支配的文化への集中化に反対している。むしろ、世界がさまざまな文明が集まる広場となり、それらが互いに影響し合い協調することによって普遍的価値が高められることを奨励している。

イスラムはその精神と本質において、宗教の自由を保証している。コーランはイスラム教徒に対して全ての預言者を信じるよう求め、一部だけを信じて他を信じないことを禁じている。したがって、コーランは宗教の複数性と、そのそれぞれに異なる戒律や生活様式を明確に容認しており、人の生は、人類が寛容をもって共存することにより、信仰の違いよりもはるかに根源的な平和と道徳的秩序の力を強めるための挑戦だとみなしている。コーランの教えは、他の宗教に対して敵対的な態度をとるものでは決してない。

世界に求められるのは、さまざまな文化に原理を引き出し、非暴力による論争解決のための基盤となる寛容な普遍的哲学を形成することである。イスラムには、1981年の欧州イスラム評議会で採択された「世界イスラム人権宣言」に示されるとおりの素晴らしい精神的遺産がある。この宣言は、人権の哲学は宗教と対立するものではなく、宗教の狂信的な解釈とのみ対立するものであることを示している。イスラム教やキリスト教といった宗教は人間の尊厳に重きを置き、これを高めようとするものであり、宗教が本来の理に適った見方で理解されれば、神権と人権の間に矛盾は生じない。したがって、東西両世界の知識層や聖職者、学者、教育者は、引き続き宗教と教義との違いを認識し、他者の視点に対する真摯な受容性を通じた相互理解の達成を目指すべきである。また、不寛容と力による対決を拒絶する努力もするべきだ。

良識ある物の見方を通じて私たちの目標を達成できるよう、共存と相互理解のための新たな教育政策とコミュニティ活動を実施すべきである。私たちは、愛、寛容、他者を認める姿勢という価値観を共有する社会を築く必要がある。そのためには教育機関の役割が決定的だ。必要なのは、教育制度のあらゆるレベルにおいて文明間の対話を効果的に形成し統合する教育の枠組みを作り出すことである。