2021.12.28

超伝導の仕組み解明へ大きな一歩 層状ニッケル酸化物超伝導体の電子構造を解明!―新たな高温超伝導体の探索のヒントに―

本学工学研究科 電子物理工学分野の播木 敦助教、博士前期課程1年の東 啓介さんとウィーン工科大学 Jan Kuneš教授らの研究グループは、2019年に超伝導(解説1)が発見された層状ニッケル酸化物(転移温度約15K、摂氏約-258度)の電子構造を明らかにするために、超伝導発見以降に世界中から報告・蓄積された実験データを、独自に開発した理論に基づく計算プログラムを用いてスーパーコンピューターで高精度解析を行いました。

その結果、このニッケル酸化物は、超伝導が室温により近い温度で発生する高温超伝導体(解説2)の銅酸化物(転移温度約138K、摂氏約-135度)と非常によく似た電子構造を持っていることを突き止めました。また、今回の解析から、超伝導が発生している状態でのニッケル酸化物内の電子軌道が予測できるようになりました。

これらの結果は、リニアモーターカーや送電ケーブル、MRIなどへの応用の可能性が秘められた、ニッケルを用いた新たな高温超伝導体を設計するための指針を与えるものと期待されます。さらに、ニッケルはもちろん、銅や鉄など、長年の謎である遷移金属化合物の超伝導発生の仕組みを探求・解明するための新たな視点となると期待されます。

なお、本研究の成果は、米国物理学会が刊行する学術雑誌「Physical Review X」にて、10月14日(木)午前0時30分(日本時間)にオンラインで掲載されました。

詳細は以下のWebサイトからご覧ください。

https://www.osakafu-u.ac.jp/press-release/pr20211014/