2020.08.21

抗肥満薬が黄色ブドウ球菌の病原因子を阻害するメカニズムを解明

京都工芸繊維大学分子化学系の北所健悟准教授らの研究グループは、大阪府立大学総合リハビリテーション学研究科の神谷重樹教授、京都大学医学研究支援センターの奥野友紀子特定講師、理化学研究所放射光科学研究センター利用システム開発研究部門の引間孝明研究員、山本雅貴部門長らとの共同研究により、黄色ブドウ球菌が産生する病原因子の1つである「リパーゼ(SAL)」の立体構造をX線構造解析の方法を用いて、世界で初めて解明しました。


また、抗肥満薬として市販されているヒトリパーゼ阻害剤「オルリスタット」が既存のSAL阻害剤よりも200倍以上SALの活性を阻害することを発見しました。更に、SALとオルリスタットとの複合体の構造を原子レベルで解析することによって、オルリスタットによる阻害のメカニズムを解明することに成功しました。
本研究成果は、構造情報を元にしたSALに対する薬剤の理論的な開発に役立つと考えられ、より有効性が高く副作用の少ない治療薬の探索・設計が可能になると期待されます。特に、SALが黄色ブドウ球菌の増殖に関与していることから既存の抗菌薬の効かないMRSA感染症や、黄色ブドウ球菌によって引き起こされるアトピー性皮膚炎などの治療薬の発展が期待されます。

なお、本研究成果は、2020年3月25日に「Scientific Reports」誌にオンライン掲載されました。

論文名「Crystal structure of pathogenic Staphylococcus aureus lipase complex with the anti-obesity drug orlistat」

 

詳細は以下のWebサイトからご覧ください。
https://www.osakafu-u.ac.jp/press-release/pr20200325/