2023.01.27

東京都立大学大学院理学研究科の水口佳一准教授らが研究発表「熱膨張係数を自在に制御可能とする超伝導体を開発 ~超伝導素子や超伝導材料の応用に有利な新材料の開発につながる指針~」を公開しました。

1.概要

東京都立大学 理学部物理学科の渡邊雄翔(学部生)、同大学大学院 理学研究科物理学専攻の水口佳一准教授、島根大学 総合理工学部 物理・マテリアル工学科の臼井秀知助教らの研究グループは、特定の結晶軸方向に負の熱膨張を示すコバルトジルコナイド超伝導体CoZr2にNiを部分置換することで、負の熱膨張から、ゼロ熱膨張、さらに正の熱膨張へと連続的に変化することを発見しました。また、結晶構造の一軸圧縮(格子コラプス)が熱膨張係数や超伝導特性と強く相関していることがわかり、類似の結晶構造を持った遷移金属ジルコナイドにおける異常熱膨張の発現に重要な指針が見出されました。それぞれの結晶軸方向の熱膨張係数を最適化することで、体積熱膨張がゼロの超伝導体を開発できれば、超伝導素子や超伝導材料の応用に有利な新材料の開発につながることが期待されます。
本成果は、2023年1月18日付で、Springer Natureが発行する英語論文誌『Scientific Reports』(オンライン雑誌)に掲載されました。本研究は、科学研究費補助金(21H00151, 21K18834)、東京都高度研究(H31-1)、東京都立大学 若手研究者等選抜型研究支援・研究環の助成を受けて行いました。

2.ポイント

  • 遷移金属ジルコナイド超伝導体における一軸的な負の熱膨張を発見した。
  • CoZr2のCoサイトをNiで部分置換することで、線熱膨張係数を自在に制御することに成功した。
  • 体積熱膨張がゼロの超伝導体開発に向けた物質設計指針を見出した。

3.研究の意義と波及効果

遷移金属ジルコナイド超伝導体(CoZr2)において、格子定数比(c/a)を大きくし格子コラプスを避けることで、バルク超伝導と大きな負の熱膨張(c軸)が同時に発現することがわかりました。
本成果は、今後の新物質開発の指針となるもので、さらなる物質開発により体積ゼロ熱膨張を示す超伝導体の開発につながります。遷移金属ジルコナイドは超伝導体であると同時に、Tc以上では金属であるため、本物質系が示す異常な熱膨張は金属系材料への応用にも期待できます。

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詳細は以下のWebサイトからご覧ください。

https://www.tmu.ac.jp/news/topics/35378.html