2020.06.09

国連アカデミックインパクト参加大学 2018-2019年活動報告書

2018-2019年、神戸市外国語大学は、国連アカデミックインパクトとその理念に貢献する数々の活動を行った。後述する取り組み事例は、いずれもとりわけ注目に値するものである。

1. サステイナビリティ/グローバル・シチズンシップ

(1)模擬国連大会

神戸市外国語大学は、3つの模擬国連関連科目を開講し、ゼネック西出・ローリー准教授及び立木ドナ教授の指導の下、学生が5つの模擬国連大会に参加した。

 

1つ目は、模擬国連世界大会ニューヨーク大会への参加である。同大会で、神戸市外国語大学の学生代表チームは、ドイツのウェストファーレン応用科学大学と合同で、南アフリカ外交団を結成した。6人の学生が外交団として、「国連総会第二委員会」、「国際移住機関」、「国連人権理事会」に参加した。また、学生代表チームは、国際連合本部を訪問した。国際関係学科4年の吉松紗恵子は国連開発局ユネスコの副議長、同学科4年の植田奈菜子は経済社会理事会内の「婦人の地位向上委員会」の副議長をそれぞれ務めた。イスパニア学科3年の寺本晶子は議事運営議長兼書記長に選ばれ、安全保障理事会の討議統括や動議への対応を担当した。英米学科2年の木村友香と第2部英米学科2年の小林光梨のチームは「政策提案文書優秀賞(Distinguished Position Paper Award)」を受賞した。また、本学とウェストファーレン応用科学大学の合同外交団は「外交団奨励賞(Honorable Mention Award)」を受賞した。さらに、学生代表チームは国連日本政府代表部星野俊也大使を表敬訪問した。

 

 2つ目に、2018年6月22日から24日にかけて京都外国語大学で開催された第9回「日本大学英語模擬国連大会(JUEMUN)」に、神戸市外国語大学から24人の学生と教員が参加した。同大会のテーマは、ユネスコ・アジア・太平洋をシミュレートして、「持続可能な開発目標(SDGs)」の2番目の目標をベースに「2030年までに飢餓と栄養失調をゼロに」と題し、京都外国語大学のクレイグ・スミス教授及びジェイ・クラパーキ教授、神戸市外国語大学のゼネック西出・ローリー准教授及び立木ドナ教授によって実施された。参加者数は252人であり、そのうち外国人参加者は42%を占めていた。外国人参加者の所属大学は、日本の大学が13、海外の大学が9であった。同大会のメンター及びスピーカーを務めたのは、1999年から2009年にユネスコ事務局長を務めた松浦晃一郎氏であった。また、ムブリ・ボリコ国際連合食糧農業機関(UNFAO)日本事務所長が基調講演を行い、世界の食糧安全保障の現状について話した。

 

 3つ目は、2018年にペナン州に位置するマレーシアサインス大学で開催された「マレーシア大学英語模擬国連大会(MUEMUN)」である。同大会のテーマは、「持続可能な開発目標(SDGs)」の3番目の目標である「すべての人に健康と福祉を」で、以下の現代国際社会が直面する5つの重大な課題に重点を置く内容となっていた。すなわち、健康管理、史跡保護、男女平等、雇用の将来及び平和と紛争解決である。

 

 4つ目として、2018年11月18日から24日にかけて中国の西安で開催された模擬国連世界大会中国大会に、ノルウェー及びスウェーデンの外交団として、本学から8人の学生が参加した。参加した会議は、「国連総会本会議」、「安全保障理事会」、「経済社会理事会」、「国際連合工業開発機関」であった。同大会では、文化視察としてユネスコ世界遺産の秦始皇帝陵及び兵馬俑を筆頭に、西安鼓楼や古代西安の城壁を訪れた。また、回教徒地区も訪れた。安全保障理事会に参加した椛山美生及びテリヨン・クリスティーヌ馨子は、「政策文書優秀賞(Outstanding Position Paper Award)」を受賞した。 

 

 5つ目は、2019年12月7日から9日にかけて筑波大学で開催された第8回「筑波英語模擬国連(TEMUN)」への参加である。参加学生は、シリア及びスペインの外交団を結成した。議題は、「持続可能な開発目標(SDGs)」の16番目の目標をベースとした「平和な世界のために包括的で持続可能な社会を促進する」であった。また、学習者のプロフィールに関する研究フォーラム

(Research Forum on Global Education and International Communication (GEIC))で、本学教員立木ドナ教授が、「ネイティブスピーカーに関する問題提起―リンガ・フランカ使用者の相互作用」と題する発表を行った。また、西出准教授が、「模擬国連―コミュニティにおける実践活動を通じた自己研鑽」と題する発表を行った。

 

(2)グローバル・ネゴシエーション・シンポジウム

2018年6月23日から25日の日本大学英語模擬国連の会期中に、京都外国語大学で立木教授(神戸市外国語大学)及びジェイ・クラパーキ教授(京都外国語大学)が、第2回定例「グローバル・ネゴシエーション・シンポジウム(Global Negotiation Symposium)」を開催した。同シンポジウムは、国連の専門家、非政府組織、研究者、日常的にネゴシエーションを行っている人、語学の教師らに、教育環境を充実させるための理論、研究、知見及びベスト・プラクティスを共有する機会として設けられた。コンフリクトに直面した場合に建設的な解決策を導く能力は、21世紀に求められる最重要スキルの一つである。

 

(3)他大学への模擬国連活動援助

2018年3月に立木ドナ教授(神戸市外国語大学)は、ローマ・サピエンツァ大学にて、同大学のマリーナ・モルビドゥッチ教授と協同で、モルビドゥッチ教授の授業の一環として、平和と安全を促進する安全保障理事会をシミュレートした模擬国連活動を行った。

 

(4)ゲスト・スピーカー

a. 平和と紛争解決

2018年5月11日に米国人で平和学の専門家であるEmeritus Helena Meyer-Knapp(ザ・エバーグリーン州立大学)教授が、「困難な謝罪:国際的な平和関係促進のために試みるべき良い戦略、平和は不可避、全ての戦争は終結する」と題する講演を行った。

 

2018年11月20日に長谷邦彦教授(京都外国語大学)が、被爆者の証言を収集することの重要性について講演し、証言はできる限り多くの言語に翻訳すべきであると主張した。長谷教授は憎しみを許しに変換することや世界中を旅した自身の経験で学んだこと、また、被爆者である武田靖彦氏の記憶に言及した。これらの尽力は大量破壊兵器の撲滅に貢献することが期待される。

 

b. 持続可能な開発目標

2018年11月9日に大久保勝仁氏(持続可能な社会にむけたジャパンユースプラットフォーム)が、持続可能な開発目標の2030年までの実現を考えたときに若者が果たすべき責任と可能性について概説した。大久保氏は、自身が参加した持続可能な開発、すなわち持続可能な開発目標の達成に向けた世代間の対話強化に関する国連ハイレベル政治フォーラムについて報告した。

 

(注)教員の職位及び学生の学年は、2018-2019年時点。